「あなたはひとりじゃないなんて台詞、笑ってやろうと思って」

 
その子は、ため息でコーヒーを冷ましながら話し始める。
 

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夜通しバカみたいに遊んで
おもしろくもないことで笑って
強いお酒で酔っぱらって
だけどヒールを鳴らしながらしっかりした足取りで歩く、
そんな帰り道にね。
 

ふと顔を上げたら
清掃車が走った後のまっさらな道路が目の前に広がってたの。
お日様の高い時間とはまったく違う
ぱあっと開けた感じがして、
なんていうか。
 

そのネズミ色のつまんない道路が、
何もない道路が、
ただの普通のおもしろみのない道路が、
すっごい清々しくて。
いいなって思ったの。
 

そのあとすぐにね、
「誰からも特に深く愛されてないって
それはそれでまあいいかな」ってね、
そんなことを、まったく拗ねたところのない気持ちでね、
思ったんだ。
 

あなたはひとりじゃないとか、
あなたがいなくなって哀しむ人はたくさんいるとか、
そういうある意味あたりまえの次元のことじゃなくてね。
そうじゃなくてね。
 

わたしが明日死んじゃったら後を追って首を吊る、ってくらいに
わたしがいないと一秒たりとも生きていけない、ってくらいに
愛してくれてるひとがひとりもいない
この今って状況はね、ネズミ色でおもしろくはないかもしれないけど
すうっと胸が軽くなるようで
それはまあなんか。
 

そんなにわるくないかもねって。
 

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シニカルというには幼い表情を浮かべる口もとが、
あどけなさのかけらもない諦念の色をした瞳を引き立てる。
話の切れ目に夜の色をしたコーヒーをすすろうと顔を寄せたら、
そこに写ったのはわたしじゃなくて
彼女の顔で。

 

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